どうしても愛を抑えられず、駄菓子を自作することにした

大人になれば駄菓子を買うのをやめられると思っていた。

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それがどうだ。

労働の対価* を得られるようになってしまったせいで、やめるどころか、今や購入する単位が「ケース」である。

(*…どんぐり、ベルマークなど)

 

幼少期、私は常にお腹を空かせていた子どもだった(別に生い立ちに不幸があったわけではなく、シンプルに食欲がぶっ壊れていた)。小銭を得るやいなや商店街に行き、小さな予算の中でその日のパーティを考える。あの感じの幸せだけでずっとやってこれたらよかったのに。

 

駄菓子を愛し続けてもう20年以上にもなる。

この気持ちを、何らかの形で世に表明した方がよいのではないか?私はそう考えた。

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脳内会議の様子

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続・脳内会議の様子

駄菓子の二次創作をする。
自分でも何を言っているかよくわからないが、なぜか「これだ」という気がした。
今までもずっと、好きすぎて気が狂いそうなものは二次創作という形で自分を落ち着けてきたのだから。


 

ぼくがかんがえたさいきょうの駄菓子

二次創作といっても、既存のマスターピースを真似て造るわけではない。そんなことをしてもオリジナルの素晴らしさを思い知るだけだ。

駄菓子の解釈…今まで長年お世話になってきたお気に入りの駄菓子たちに、アンサーソングならぬアンサー駄菓子を捧げることにした。

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 正直に言おう。わたしはタラタラしてんじゃねーよを週5で食べている。会社近くのコンビニで売っているのが悪いのだ。全てのコンビニがタラタラしてんじゃねーよの取り扱いをやめる蛮行に出るか、全てのコンビニが潰れるまで買い続けるだろう。

 

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馬車馬のように働いた帰路にこれが”効く”

疑いようもなく、筆者がもっとも愛を叫びたい駄菓子はタラタラしてんじゃねーよだ。ここからアンサーをはじめよう。

 

 

 タラタラしてんじゃねーよの対バンになりたい

タラタラしてんじゃねーよ。

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突拍子もないように見えて、いいパッケージとタイトルだ。

おそらく原材料の「魚肉」に鱈が使用されており、「タラタラ」とかかっているのであろう。パンクバンド風のこのキャラクターは、激辛味の精神性を表現したものと推測する。駄菓子のメッセージにしては強烈だ。

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 原材料は魚肉、でん粉、たん白加水分解物など。
魚肉、でん粉はまだ分かるとして、たん白質なんちゃらってマジで何?

調べたところ調味料の一種らしいが、たん白質を自宅で加水分解するところから始めていたら業者になってしまう。
今回は身の回りで気軽に手に入る食材のみ使用することにする。

 

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ということで、スーパーで鱈を買ってきた。これで基礎を造る。

チータラのガワ的なものならレシピがネットに投げてあるだろうとタカを括っていたが、どのように検索してもチータラのガワを自作している人はいなかった。勘でいくしかない。

 

おそらく、あれはシート状の焼きカマボコなのだろう。とりあえず酒と水で蒸して、鱈に火を通してみる。

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ちなみに蒸す工程が不要であることに気づいたのはかなり後になってからである

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小骨と皮を取り除きながらすり鉢で練っていく。我が家にブレンダーなんてものはない。

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ボウルに移し、つなぎの片栗粉を入れる。調味料としてきび糖(重要)と醤油を合わせたタレも。

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練って弾力がでてきたら、オーブンシートに挟んで綿棒で薄くのばす。

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180℃のオーブンで20分。端っこがパリパリになってしまったが、かなりそれらしいものができた。砂糖醤油味の魚肉シート完成。

 

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タラタラしてんじゃねーよのサイズは約1.5×2cm。これを目安に魚肉シートをカットしていく。

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中身ができた。ちょっと見た目は悪いが、二次創作がオリジナルを越えようなどと考えることがそもそも烏滸がましいのだ。

 

続いてパッケージの作成に移るが、ここでコンセプトの説明をしておこう。

タラタラしてんじゃねーよに対する私のアンサーは、これだ。

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キビキビやってやんよ

タラタラしてんじゃねーよなんて、上から言ってくれるじゃん。

こちとら対バンのガールズバンド。ゴチャゴチャ言われなくてもわかってるぜ。

今湧かしてやっから待ってなよ。

自分のジョークについて説明する苦行をなぜ自分に課さなければならないのかと思うが、名前は調味料に使用した「きび糖」とかかっている。

 

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タラタラしてんじゃねーよのパッケージは約12cm×13cm。

パッケージを作るため、クリップシーラー(熱で袋を圧着する機械)と専用の袋を買ってきた。

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オリジナルの駄菓子のパッケージと同じサイズに切って、熱で四隅を圧着。その後プラスチックフィルム製のシールを貼る、という手順。

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シールを印刷し、余白を切り落としておく

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タラタラしてんじゃねーよの内容量に合わせて、「キビキビやってやんよ」を12gに小分け。

 袋に詰めて、シールを貼ったら完成である。

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「タラタラしてんじゃねーよ」のアンサー駄菓子、「キビキビやってやんよ」。  

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筆者だけが待ち望んでいた対バン。キビキビやってやんよは駆け出しのバンドのため、まだ最前列で湧く観客がいない。これからどんなパフォーマンスで魅せてくれるというのか……


早速友人に食べてもらった。

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友人「うまいなこれ つまみっぽい」


私「なんかマグロのキューブみたいな味するね」

友人「止まらん 助けて」

 

タラタラしてんじゃねーよ特有のふわっとした食感は再現できなかったが、魚の香ばしさときび砂糖醤油の甘じょっぱさが後を引く。これはこれで美味しい駄菓子だ(友人は食べる手が止まらなくなり、最終的には「腕を縛ってくれ!!」と叫んでいた)。

 

 

〇〇さん太郎、駄菓子界のイーブイ

気が付いたことがある。

 

 これ、もしかして○○太郎シリーズの基礎と同じではないだろうか?

 

酢だこさん太郎や焼肉さん太郎、バリエーション豊かな彼らを誰しも一度は食べたことがあるだろう。

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デュエルスタンバイ

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原材料をみてみたところ、やはり「魚肉すり身」の文字!そして小麦粉と、イカ粉。

イカ粉…?

 イカを…?粉に…?このわたくしが…?

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脳内お嬢様も困惑しておいでです

謎のイカ粉はお好み焼き用の切りいかで代用するとして、ベースが魚肉すり身+粉であることには変わりない。焼肉さん太郎や蒲焼さん太郎も、味付けが違うだけで基礎は同じであった。まるで駄菓子界のイーブイ

ということで、次に造る駄菓子は○○さん太郎シリーズとする。

私が特に気に入っているのはのし梅さん太郎、わさびのりさん太郎だが、理由は「大人っぽい味付けで酒に合う」から。

大人向けの味付けで考えるとしたら、もはや選択肢はこれしかないだろう。

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寿司。

大人の食べ物といえばこれ。マジで最高。

もし私がアメリカの死刑囚になったら、最後の食事に「マグロを二貫」と頼んで後世のネットで面白がられるだろう。

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『凶悪犯の最後の晩餐集』より


○○さん太郎シリーズはびちゃびちゃのタイプとパリパリのタイプがあるが、寿司は何となくびちゃびちゃな気がしたので漬け汁を造る。

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ガリの汁に水溶き片栗粉でとろみをつけ、醤油とわさびで寿司っぽさを演出。

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こちらは生の鱈で作ってみよう。

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すり鉢でペースト状になるまですって、小麦粉、切りイカ、塩を加え、酒と少量の水で形を整える。キビキビやってやんよ同様、クッキングシートに挟んで焼いたら基礎の完成。

 

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寿司さん太郎のパッケージを作成

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「大人の辛(から)さ!」とキャッチコピーを書いたら、「大人の辛(つら)さ!」としか読めなくなってしまった


先ほどの「キビキビやってやんよ」もそうだったが、駄菓子のパッケージは部分的に透明になりがちだ。 

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わさびのり太郎のシルエット、マジで何なんだ

この記事では市販の不透明シールフィルムを使用している都合上、部分的に透明にすることができない。手動でちまちま切り取ることになるが、駄菓子に対する愛を表明するためならそのくらいの手間は惜しまない。

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我が家にはピンキング鋏がないため、ギザギザ部分もカッターで切り取る。

こちらも同様に印刷し、透明部分をバラン型に切り抜く。酢だこさん太郎と同じ4×11cmに切った基礎と漬け汁を入れ、口を閉じたら完成。

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こちらも友人に食べてもらう。

 

私「どう?」

 

友人「これ穴子の寿司だ。」

 

穴子の寿司ができた。

 

 

謎の粉を知っている粉にしよう

しょっぱいだけが駄菓子ではない。

子どもと言えば、甘いもの好きの代表と言っても過言ではない存在。

 チューブに入った柔らかい糖(何でできているのか未だに分からない)とか、容器に入ったヨーグルト的な何か(何でできているのか本当に分からない)とか、思い出深い駄菓子はたくさんあるが、筆者が特に好きだったのはこちらである。

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粉に水をいれるだけのジュース。

 幼少期、駄菓子がたまに持つ魔法っぽさに魅了されていたが、そのうちの1つがこれだった。お風呂の入浴剤なんかもそうであるが、子どもはだいたい「粉を水に入れる」行為が好きだ。

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ビーカーで飲むと化学の味がしてうまい

当時はコーラ味こそ至高、天上天下コーラ独尊と思っていたが、擦れた大人になったいま本当に欲しい液体はこれである。

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大人のエリクサー。

我々業深き大人たちは、時としてジュースでは癒せない「乾き」を抱えている。

が、流石に駄菓子に酒を入れるのは邪道すぎるため、ノンアルコールぶどうシュワシュワを目指すことにした。ノンアルコールなら、運転中や会社の大事な会議中でも安心である。

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粉ジュースのシュワシュワはどうやってつくっているのだろうと原材料を見てみたら、それらしき原材料が「重曹」しかなかった。マジでか?

試しに重曹だけ水に入れて飲んでみたところ、普通に苦えぐいだけの水になって最悪だった。「あ、酸味料ってクエン酸か」と気づいたのは約1時間後のことである。

 

正体がわかったところで、さっそく作ってみよう。

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粉にぶどうの香りをつけるため、上白糖に少量ずつグレープジュースを加える。

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焦げないように熱し、みぞれ状になったペーストに上白糖を足してすり混ぜる。

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 ぶどうフレーバーの砂糖ができた。すごいマスカットの香り。

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クエン酸重曹を小さじ1ずつ入れ、大きい結晶を砕きながらよく混ぜたら完成。

なんで粉ジュースってどの作成過程も実験みたいになるんだ。

 

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続いてパッケージ。飲み物のイメージイラストと共に、背景はフリー素材の夜景(100万ドルの夜景の対義語)を合成した。

いつか六本木タワー?みたいなのにエレベーターで登って、社交ダンスを愉しみながら高級な飲み物を飲むのだという幼少期の妄想を詰め込んだ、まさに夢の粉である。気分はもうシンデレラ。

 

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他の粉ジュースと同容量の12g計って袋詰めしたら、グレープ・スパークリング完成!

 早速ジュースにしてみよう。

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おおおおおおおおおお

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思ったよりシュワシュワして盛り上がってしまった。ほのかなブドウの香りと甘酸っぱさが心地よく、スポーツの後などに飲みたいおいしいドリンクである(調べたところ、クエン酸重曹も適量を摂れば疲労回復の効果があるようで、スポーツ後や会議中に飲むのはマジでいいのかもしれない)。

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シール貼る前の「ゴト」感がやばかった

 

まとめ

アンサー駄菓子をたった3種類作るのに、ほぼ丸一日かかってしまった。こんなに手間がかかっておいしいものをたった数十円で提供してくれる駄菓子界はなんと偉大なのだろう。

 

ちなみに

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もう駄菓子メーカーさんに足を向けて寝られません。

JUNERAYでした。

 


【追記】2021/02/17
オモコロ杯2021にて優秀賞(本大会最高賞) をいただきました。